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デジタルについてトッププロファーム勤務の藤谷が書き綴ります。

誰もが戦略業務をやらばければならない時代に -3000年の叡智を学べる 戦略図鑑 (1/2)

戦略の本で久しぶりにこれはと思う本を見つけました。

3000年の叡智を学べる 戦略図鑑 
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最近のtech企業はファーム出身者が本当に多いので、コンサルタントでもないのに若手コンサルタントみたいな詰められ方をしている光景をよく見かけます。で、スライドに代表される資料作成くらいならいいんですけれど、なんといっても難しいのは戦略業務ですね。誰もが戦略業務の様なことをやる時代になったなあ、と本当に思います。やらなければならなくなったという表現の方が正しいかもしれません。

いまのランドスケープだと、戦略ってひょっとしたらサブスキルとしてこそ輝くタイプのスキルになっているかもしれないと最近思いたちました。同時通訳者にはならずに普通のビジネスマンが英語でビジネスを推進出来るとか、 会計士にはならずに簿記1級の方が投資効果高いみたいな投資対効果が高いみたいな話に似ています。まったくもっての仮説ですが、日々確信が強まっています。

理由は単純で、ぼくが現役の頃からPure strategyと呼べるPJが業界から減っていたからです。そして、増加に転じるような感はまったくありませんでした。tech企業にはファーム出身者が増え、事業会社でもファーム出身者が戦略業務を行うようになりました。「そのスキル単体では成立しない」のならばそれはメインスキルではなく、サブスキルです。

その後、ぼくはファームからtech companyに転職するわけですが、Strategy firmがやるような単価数千万のガッチガチな戦略業務よりもビジネスマンの通常業務に戦略業務が求められるというところにボリュームゾーンがあるんだなとホント思いました。

誰もが戦略業務の要素を日々の業務に求められる時代です。

しかし、戦略業務というのは身につけるのが本当に難しいです。明確な定義もトレーニング方法がないからです。ぼくがファームに入ってしばらくして思ったのは「別に何らかの明確な方法論があるわけじゃないんだな」ということです。現在の視点からすると、これは単に方法論を対象にあてはめようとしている典型的な初心者の態度なんですけれど、やはり凄い組織に入るとそこでの何らの方法論を求めてしまいがちです。何も方法論がないところから、上司や同僚と目の前の案件に取組むことによって身につきますね。

こういう時に「戦略業務は戦略ファームでしか学べないよ」とか意地悪めいたことを言いだすことをいる方がいますが、そもそもそうそう戦略ファームに転職しますって訳にもいかないですね。そりゃ、そうやんって話です。方法論の価値というのは「みんなが使える方法論」であることははずせません。「戦略業務は戦略ファームでしか学べません」というのは使える方が限られるので、方法論としての価値は限定的です。そもそもボリュームゾーンは別にコンサルタントじゃない方が戦略的な業務や思考を出来ることにあるのです。(ここまで書いて思ったのですが、それで戦略ファーム出身者がbig4向けに戦略研修とかやったりし始めるんですね)

そもそも戦略業務は実践回数がすべてです。自身が描いた戦略が他者に承認されたり、いよいよその戦略に沿って物事が進んでいく様を体験することに勝る経験はありません。 そしてこれは別に戦略ファームじゃなくてもよいのです。

というようなことを思っていた時に、とても良い戦略の本を見つけました。

これはとても良いです。

最小限の情報量で全体感を提示している
情報量が最小限というのは本当に重要です。人間の頭は一度に大量の情報を処理出来ないという普遍の真理があるからです。ぼくももう何十冊も〜〜戦略みたいな本を買いましたけど、ほんとに実務で活かそうとしたら、情報量が絞られているのは本当に重要です。分厚くて、値段が高くて、何かが身についたようでなにもかわらない本に取り組むのは大学受験で難し過ぎる問題集を解いて時間を浪費する作業に似ています。

各要素のイシューの部分を丁寧におさえている
これは書き手には結構大変な作業ですし、読み手に対しては貢献性の高い作業です。ファームのアウトプットについても、極限まで情報を削ったコンサルタントの明確な意思が伝わってくるスライドと、文字がギッシリの情報量が多過ぎる誰も幸福にならないスライドできっちりわかれますね。

網羅性が高い
孫氏からブロックチェーン・レボリューション(これ戦略かなあ)、名著プラットフォームレボリューションまでカバーしてます。

そして図鑑形式で見やすい
見やすい見にくいでいったら、見やすい方がいいのです。
英語学習が一番分かりやすいですが、こういう基礎領域の本を紹介すると大抵馬鹿にされたり「そんなことはもうわかっている」といった反応をされます。が、下記の内容がスラスラ〜〜と答えられなかったらやっぱり基礎領域は疎かになっているのです。

孫子における最善の策とは
・Jay B. Barneyが提唱した戦略の基本的な概要は何でしょう
・Michael PorterとJay B. Barneyの戦略って、検証の結果どちらが有効だったでしょうか
・Blue ocean strategyの価値曲線の3要素はなんでしょうか
大野耐一は何を成し遂げた偉人でしょうか
・TencentがChina marketにおいてMSを打倒した基本戦略はなんでしょうか
・戦略サファリって結局何したんでしょう
ティール組織ってなんでしょう
・皆大好き、ぼくも敬愛してやまないPeter Thielがよく言うProprietary technologyってなんでしょう
・稀代の名著『情報の文明学』ってどんな本ですか

要は、戦略の全体像をきっちりイシューを押さえて最小量の情報量で提示しているので非常に読み手への貢献性が高いです。まずは情報構造そのものを、最小単位の情報量で、頭の中に入れるのが初手としては筋が良いです。
長くなったので続きます。

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