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デジタルについてトッププロファーム勤務の藤谷が書き綴ります。

金融のプロフェッショナルでないプロフェッショナル向けの隠れた名著 - 書評 - 金融経済学 (東大出版) /良き社会のための経済学  *随時更新予定

隠れたファイナンスの名著金融経済学


最近、物凄くいいファイナンスの本を見つけました。ぼくはずっとバックグラウンドが良くて、教育者としてもイケてる方が、金融資本市場をエコシステムとしてガッツリ真っ当に書いたみたいな本がないかと思っていました。で、そんな本がそうそう都合よくあるわきゃないんですけれど、ありました。イメージバッチリです。それも2冊です

金融経済学
https://amzn.to/2wVxeLo
 

目次はこの通りなんですけれど、この感じを待っていたと言わざるを得ません。単純に広範囲をさらっとまとめてくれた本はあるんですけれど、この本の書き方は、エコシステムとしての繋がりを表現しきれています
第I部 価値評価と企業の意思決定第1章 投資の価値評価
第2章 金融資産の価値評価
第3章 企業の資本構成と金融資産の価値
第4章 企業の財務戦略
第5章 コーポレート・ガバナンス
第II部 金融市場と金融機関
第6章 資本市場と資産価格
第7章 債務市場と利子率
第8章 デリバティブ市場
第9章 金融機関の機能
第10章 金融機関のリスク・マネジメント
第11章 金融機関の規制
第12章 金融市場のメカニズムと制度
第III部 金融政策とマクロ経済
第13章 金融政策
第14章 金融政策のマクロ経済学的基礎

この書評がとても良いです。
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以下、引用(Amazon書評主流派の経済学における金融論は難しい。

なぜなら、主流派の真骨頂である一般均衡理論は、
原則的には、貨幣や金融を必要としない物々交換経済を
モデリングしたものであり、古典的に言われるように、
貨幣は実体経済に対して中立的で、ヴェールに過ぎない。

そのため、貨幣や金融を分析しようにも、
分析の遡上に乗せることがそもそも困難であり、
この問題を回避?するアプローチが並行して進んでいて、
全体像がわかりにくいのが難しい理由のひとつである。

分析のアプローチは三つあり、それぞれ
①金融をリスク分担の問題と捉える金融工学的アプローチ
②金融を情報の非対称性の問題と捉えるゲーム理論的アプローチ
②金融を貨幣効用の問題と捉える一般均衡動学的アプローチ
である。(数学的にはどれも最適化と確率論と統計学ではある)

これまで、邦書・洋書含めて、これら三つを俯瞰的に扱う書籍を
見たことがなかったが、本書はそれを大学院レベルの
教科書として結実させている。
さすが東大卒の研究者の知性というべきだろうか。
引用終
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またこの本には練習問題が豊富なんですが、これがとても良いですその内容や絶妙に数式のレベルをおさえている点が非常に好感が持てます。読者の便益への配慮が感じられます。ぼくは自分のビジネスKPIは他者貢献性に常においているので、自分のケイパビリティを振り回している本よりも、こういう他者貢献性の高いアプローチを尊敬します。

著者の方も含めてまったく有名じゃないみたいなんですが、なぜなんでしょうか。

日本の出版業界はマーケティング過多なので、こういう名著を自分で探し出す必要がありますね。でもまあ、音楽やゲームもまったく同じですからね。優れたものを探し出す消費者側の努力が必要です。東大出版は偶に名著を出すと改めて思った次第です。
 

もう一冊はこれです。


良き社会のための経済学
https://amzn.to/3ava5xb

 

著者のJean Tiroleはノーベル経済学賞受賞者ですが、なんというかスター学者です。みんなが好きで、みんなから認められるタイプの方です。そんなTiroleが一般向けに書いた本がこれで、非常に現実的な目線で、重厚な割にあまり役に立たない専門知識が必要ない配慮がなされており非常に他社貢献性が高いです。