Digital, digital and digital

デジタルについてトッププロファーム勤務の藤谷が書き綴ります。

簿記 - それは馬鹿にする誰もが甚大な損をするサブスキルの大臣 (6/) - 簿記の決定板の教科書が出た

簿記の勉強は人気がない

ファームからtech companyに転職して早1年以上経過し、テクノロジーにどっぷりはまりつつも担当する業務はほとんどStratgy workです。それと同時に指導をする後輩の人数が増えています。そんな中で、会計を勉強してくれない後輩に困っています。れ本当に困ってます。投資銀行は入社前に頑張って簿記2級取るみたいだよ!とかカッコイイ風に言ってみてもダメです。これ最近の困り事項です。

やっぱり簿記の勉強は人気がないなあと再確認するわけなんですが、ビジネスの基礎中の基礎なので困っています。特に知識量と練習量が効いてくる領域なので、根幹の部分を早い段階で固めてその上に諸々が乗ってくるステータスになって欲しいんですね。が、そもそも簿記は馬鹿にされやすい領域なのことに加えて、他に魅力的な学習対象が山の様にあるので気持ちはわかります。が、同時に必要です

ついに出た様に思う簿記の決定版の教科書

そんな中でこれはちょっと決定版なんじゃないかという簿記の教科書がついに出た様に思います

CPA会計学院のいちばんわかる日商簿記3級の教科書
https://amzn.to/2LNYHX5

これは凄くいいです。簿記の構造が頭にスッキリ入ってきます。基礎領域でこれをするのは難しいはずです。恐らくは、若干強め過ぎるくらいの抽象化をして、読者の理解を促進することに特化しています。ちょっと関正夫さんの英語の参考書の書き方に似ています。"勘所"を簡潔にまとめた上で、新しい定義で説明しているんですね。


参考記事
関正生さんの英語の説明はなぜわかりやすいか
https://note.com/touya_fujitani/n/nac67d11d27eb

 

定義を中心に少し内容を紹介してみます

BS、PLの主要項目の定義

 

純資産の定義

一般的には「資産と負債の差額」とされることが多いかと思いますが、「資金の調達源泉のうち返済義務のない金額」としています。これが何に有用かということ、負債の定義を「資金の調達源泉のうち返済義務のある金額」と出来るので、BSの貸方について資金の調達源泉(返済義務有り/無し)の2パターンで綺麗に切れてるのですね。ちょっとしたことの様で、これだけでとても分かりやすくなります

 

繰越利益剰余金の定義

繰越利益剰余金は「会社が稼いだ金額」と言い切っています。若干大丈夫かと思わないでもないですが、やはり理解促進の為に強めの抽象化をしてるのですね

 

収益・費用の定義

繰越剰余金にフォーカスした定義をしていて、収益は繰越利益剰余金の増加要因のことで、費用とは減少要因のこととしています。まとめると下記の通りです

収益: 繰越利益剰余金の増加要因 
費用:繰越利益剰余金の減少要因
当期純利益:当期の儲け(繰越利益剰余金の増加額)

これも一般的には純資産の部の増減要因として語られることが多い様に思うのですが、確かに繰越剰余金で定義した方が分かりやすいです。BSの説明からのPLの必要性の説明のフローも流れが綺麗です

1.貸借対照表の繰越利益剰余金の増減額が当期純利益となる。
2.貸借対照表だけでは、繰越利益剰余金の増減要因が不明である。
        →故に損益計算書が必要

 

試算表のポイント

一応本書上の定義もおさえておくと、「試算表は、総勘定元帳の各勘定の金額を集計した一覧表」というもので極めて普通のものでした。ただやっぱり勘所をおさえてるなと思うのは、下記の表です

 



試算表の勘定科目の順番が、"資産→負債→資本→収益→費用"になってるのって確かにルールというわけではないので教科書には書きづらいのですが、ほとんどのケースでこうなってるので説明したあげた方が特に初心者の読者への貢献性は高い様に思います。こういったちょっと気の利いたことの積み重ねで良書は出来上がりますね。
"勘所"を簡潔にまとめた上で、新しい定義で説明する、ってなんとなく流行りそうなアプローチです。次は統計領域で期待です。
 
時頭の良さは本当に申し分ない後輩達にはサクッと簿記は身に付けてしまって、目の前のビジネス取引がいつでも脳内で仕訳変換出来るであるとか、ビジジネスイシューの会計上の取り扱いが出来る様な状態になって欲しいと思う次第です