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デジタルについてトッププロファーム勤務の藤谷が書き綴ります。

Stanfordが無料公開している超良質なCS/Data Science/AI クラスまとめ (*随時更新)

2022年の年末が見えてきていますが、22年最高のまとめ記事なんじゃないかと思うものを見つけてしまいました。Stanfordが無料公開してくれているCS/Data Science/AIのクラスを網羅的に紹介してくれています。これはちょっと素晴らしいというか、考えられないようなことです。Digital proffesionalな方達が見たら嬉しくて泣いちゃうんじゃないかと思います。最良質の情報のアクセスは開かれているので、後は各個人走るだけですね

 

www.classcentral.com

 

参照用に記事の本文を転載しています。元記事だと各授業のリンクがあるのでそちらを参照ください


--
(以下転載)

Over the last decade, computer science has experienced a burst in popularity among students worldwide, and at Stanford University in particular. In 2020, over twice as many Stanford undergrads majored in CS as in any other discipline. And Stanford’s CS curriculum has grown from a few core subjects to a tapestry of specializations and integrated disciplines, as you can see below.

Stanford’s CS core and specialization subjects

Most of Stanford’s on-campus computer science courses have a companion website. Some are only open to Stanford students. But many are open to everyone, allowing learners worldwide to access the course slides, readings, and assignments. And some even provide video lessons — for instance:

In this Class Central article, we compiled a list of over 150 Stanford on-campus computer science courses that are, to varying degrees, available online.

For your convenience, we’ve broken down the courses by topic. You can click on a topic to jump to the corresponding courses.

More Stanford Courses

If CS isn’t your cup of tea, Stanford also offers medical online courses and webinars, which free certificates of completion. And if you’re a healthcare professional, they also carry continuing medical education credit. Learn more here: Stanford Medicine Offers Courses with Free Certificate & CME Credit.

Methodology

First, I built a list of Stanford’s CS offering by looking at their 2022 course catalog and Engineering Everywhere portalSecond, I checked the courses one by one to see which had a companion websiteThird, I organized them into subjects according to Stanford’s own undergraduate and graduate guidelines. Fourth, I consolidated my findings into a dedicated list.

Note that this list only includes Stanford’s on-campus courses that have an online presence. To see a list of the university’s purely online courses and MOOCs, head to our Stanford online course catalog.

Without further ado, here are Stanford’s on-campus courses available online. Courses that include video recordings are denoted with the 🎦 icons.


Stanford Introduction to Computer Science Courses

Stanford Data Structures & Algorithms Courses

Stanford Computer Systems Courses

Stanford Theoretical Computer Science Courses

Stanford Artificial Intelligence & Machine Learning Courses

Stanford Computer & Network Security Courses

Stanford Information Management & Analytics Courses

Stanford Human-Computer Interaction Courses

Stanford Graphics Courses

Stanford Application Development Courses

Stanford Robotics Courses

Stanford Games Courses

Stanford Computing & Society Courses

Stanford Biocomputation Courses

Stanford Computer & Healthcare Courses

Other Stanford Courses

参考程度ですが、皆んな大好きDeepmindのeducational contentsも公開されています。

github.com

統計学の名著 (入門書) - マーケティング過多の中で、何はともあれまずはこの6冊の名著から(随時更新)

統計学の名著6冊 + 問題集

専門家でもないのに思いっきり地雷を踏み抜きますが、最近の統計学は本当にマーケティング過多ですね。MITのコースの為に、OAZOの中で1hくらい統計の本を物色しましたが、やはり名著はそんなに頻繁には出ないんだなという普通の結論になり、1冊も買わずに既に持っているものの復習だなという結論になりました。
 
時代の流れに打ち勝てる名著は価値は変わらないですね。ここにあげた以上の内容ということになると、個々人の業務上の必要に応じた範囲に特化した本であるとか、論文になるかと思います。

過去記事
Statistics and Data Science from MIT will start soon
http://touya-fujitani.blogspot.com/2018/08/statistics-and-data-science-from-mit.html?view=flipcard

統計入門書

  • キーポイント確率・統計
    https://amzn.to/2C6BfyB
    このblogでは度々取り上げていますが、キーポイントシリーズは本当に素晴らしいシリーズです。なぜかというと、基礎領域を対象とする知識体系の基本構造を最小の情報量で記載してくれています。端的にいうと、とても薄いです。この薄さ(=情報量)だったら完全に頭にいれることが出来ます。似たシリーズに東京大学工学教程がありますが、こちらもとてもおすすめです

top engineerの同僚が持っていて知ったのですが、これはすごく良いです。高校の最も良質な問題集の大学版みたいなアプローチを取っています。筆者の高い理解度がそのままま本の内容に反映されているみたいな本です。ゼロから非常に深いところまで解説してくれています。こういうのあったな〜〜ってやつです。また重要定理の証明を問題として大量に掲載しており、これは非常に重要です
「単に証明を記載する」ということと
問題の中に定理の証明を組み込んで、問題を解いていく中で定理の証明も同時に学習出来る
というのは大きな違いで、後者は非常に貢献性が高いです。理三に入るような奴とかこの手の本を完璧にしていること多かったなーとか思い出しました。社会人になったいまでも誰しもが羨むtop engineerとかそういった層こそ、こういう本を完璧にしているところを見かけたりするわけです。キーポイントを読んだ後の1冊として非常にお薦めです。

  • 基本統計学
    https://amzn.to/2PVgtEY
    この本は名著中の名著なのですが、知名度が低いですね。本投稿で一番推したいのはこの本です。やはり「本来こういう本がもっと売れるべき」というのがありますし、そもそも「みんな変な本ばかり買って損してない!?」と思ってしまうからです。もう説明の仕方からして、他の「オススメデキナイ、、、」とは完全に一線を画しています。統計という領域で、ロングセラーになるのは強烈な理由があるのです。この圧倒的に高い「説明の質」は稀有です。


  • 確率と統計 - 情報学への架橋 -
    https://amzn.to/3O3yEoU
    この本もあまり知名度がない様に思うのですが、とても読者貢献性の高い名著です。説明が分かりやすく、そして定義が分かりやすい本です。定義の仕方が素晴らしいというのは名著には欠かせない特徴の一つですが、その点において突出しています。カルバックライブラー情報量が、そもそも何で、何に使われるのかといった根幹の説明を非常に高い質で行ってくれています。何冊も統計の本を読んだけれど、何を言っているのかいまいち腹落ちしないという方は本書を一読してみると良いかもしれません

  • データ分析に必須の知識・考え方 統計学入門 仮説検定から統計モデリングまで
     https://amzn.to/3sl8J2R
    新刊はチェックする様にしているのですが、久しぶりに基礎領域で名著が出た様に思います。説明と仕方と図解の双方がとても骨太・丁寧かつ分かりやすいです。


  •  

ベイス統計・統計モデリング

RCT(個別トピック)

  • データ分析の力 因果関係に迫る思考法
    https://amzn.to/2oreFqD
    新星としてに現われた名著です。これが1,000円以下というのはやはり凄いです。新書はこういう「たまに現れる名著」だけ相手にするのが吉ですね。


統計の問題集

MITのDSコースで "People can grow only by solving problems."というフレーズが出てきます。ぼくはこれが非常に好きです。英語もそうですが、統計はさらに"問題を実際に解くこと以外には大きな成長はありません"。数学って語学みたいなところがあるので、毎日訓練しないと伸びません。それと同時に、ABC予想の証明みたいな宇宙人がやる領域を除けば、正しい方法で毎日訓練すれば必ず伸びます。ここが救いがあるところですね。
 
以上の本のレベルを越えたら

  • 新装改訂版 現代数理統計学
    https://amzn.to/3b0jmiZ

    日本の統計の第一人者の竹村先生が書かれた名著中の名著です。長らく絶版に近い状態だったのですが、新装版が出てくれました。ここまで良質に語り尽くしてくれる教材って他のものはMITのものしか思いつきません。名著です



  • 現代数理統計学の基礎
    https://amzn.to/3r342rM
    統計検定1級対策にはベストの1冊だけど、数理統計学のテキストとしてはね、、みたいなよく分からないディスられ方をすることで有名。普通に優れた数理統計学のテキストだと思う。MITの準備の為の本として購入 現代数理統計学の基礎
 
関連記事 : 恐らく日本で最高のData Scienceの授業です
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社会人の勉強の最大の問題点

社会人の勉強の最大の問題点、それは「問題を解くという行為」が少な過ぎる点です。

 

高校生が自分で教科書と問題集を解きまくって東大に受かるというのは普通に出来ます。ただ、「教科書だけ」で東大に受かれとなると話は別です。流石にその水準は完全に天才レベルだと言わざるを得ません。それにも関わらず、社会人の学習には「問題を解く」という行為が少なすぎるのです。資格試験では問題を解きますが、専門書を読む「のみ」というパターンが多いのです。多いのですというか、何故か社会人学習だけが、読む「だけ」で何かを習得するという無理ゲーに知らない間になっているのです(これ皆すっごい損していると思っているんだけれど、どうだろうか)。余談ですが、なのでぼくはNetflixを延々と見て英語を勉強するみたいな方法論は望ましくないと思っています。

 

英語学習 - Netflixを延々と見るのではなく。あるいは最も楽しい学習方法
http://touya-fujitani.blogspot.com/2018/09/netflix.html?q=MIT

ぼくはMOOCSを非常に多用していますが、MOOCSはそこを解決してくれる点が素晴らしいです。例えばこのMITのData scienceのコースなどは「何度も解くに値する問題」を大量に提供してくれます。

Statistics and Data Science from MIT - Probability - The Science of Uncertainty and Data (10/)

http://touya-fujitani.blogspot.com/2018/12/statistics-and-data-science-from-mit.html?q=MIT

 

日本だと大学受験の問題集とかって名著の宝庫なのですが、大学課程から結構怪しくなってしまい社会人学習だと結構壊滅状態なんじゃないかと思います。何千万ものコストをかけてMBAに行くような時代でもありません。

 

日本の終身雇用も崩壊が宣言され、個人がキャリアをつくっていく時代になった今MOOCSはこれからどんどん伸びそうです。MOOCSを使いこなすスキル自体も重要なので善は急げです。

 

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簿記 - それは馬鹿にする誰もが甚大な損をするサブスキルの大臣 (6/) - 簿記の決定板の教科書が出た

簿記の勉強は人気がない

ファームからtech companyに転職して早1年以上経過し、テクノロジーにどっぷりはまりつつも担当する業務はほとんどStratgy workです。それと同時に指導をする後輩の人数が増えています。そんな中で、会計を勉強してくれない後輩に困っています。れ本当に困ってます。投資銀行は入社前に頑張って簿記2級取るみたいだよ!とかカッコイイ風に言ってみてもダメです。これ最近の困り事項です。

やっぱり簿記の勉強は人気がないなあと再確認するわけなんですが、ビジネスの基礎中の基礎なので困っています。特に知識量と練習量が効いてくる領域なので、根幹の部分を早い段階で固めてその上に諸々が乗ってくるステータスになって欲しいんですね。が、そもそも簿記は馬鹿にされやすい領域なのことに加えて、他に魅力的な学習対象が山の様にあるので気持ちはわかります。が、同時に必要です

ついに出た様に思う簿記の決定版の教科書

そんな中でこれはちょっと決定版なんじゃないかという簿記の教科書がついに出た様に思います

CPA会計学院のいちばんわかる日商簿記3級の教科書
https://amzn.to/2LNYHX5

これは凄くいいです。簿記の構造が頭にスッキリ入ってきます。基礎領域でこれをするのは難しいはずです。恐らくは、若干強め過ぎるくらいの抽象化をして、読者の理解を促進することに特化しています。ちょっと関正夫さんの英語の参考書の書き方に似ています。"勘所"を簡潔にまとめた上で、新しい定義で説明しているんですね。


参考記事
関正生さんの英語の説明はなぜわかりやすいか
https://note.com/touya_fujitani/n/nac67d11d27eb

 

定義を中心に少し内容を紹介してみます

BS、PLの主要項目の定義

 

純資産の定義

一般的には「資産と負債の差額」とされることが多いかと思いますが、「資金の調達源泉のうち返済義務のない金額」としています。これが何に有用かということ、負債の定義を「資金の調達源泉のうち返済義務のある金額」と出来るので、BSの貸方について資金の調達源泉(返済義務有り/無し)の2パターンで綺麗に切れてるのですね。ちょっとしたことの様で、これだけでとても分かりやすくなります

 

繰越利益剰余金の定義

繰越利益剰余金は「会社が稼いだ金額」と言い切っています。若干大丈夫かと思わないでもないですが、やはり理解促進の為に強めの抽象化をしてるのですね

 

収益・費用の定義

繰越剰余金にフォーカスした定義をしていて、収益は繰越利益剰余金の増加要因のことで、費用とは減少要因のこととしています。まとめると下記の通りです

収益: 繰越利益剰余金の増加要因 
費用:繰越利益剰余金の減少要因
当期純利益:当期の儲け(繰越利益剰余金の増加額)

これも一般的には純資産の部の増減要因として語られることが多い様に思うのですが、確かに繰越剰余金で定義した方が分かりやすいです。BSの説明からのPLの必要性の説明のフローも流れが綺麗です

1.貸借対照表の繰越利益剰余金の増減額が当期純利益となる。
2.貸借対照表だけでは、繰越利益剰余金の増減要因が不明である。
        →故に損益計算書が必要

 

試算表のポイント

一応本書上の定義もおさえておくと、「試算表は、総勘定元帳の各勘定の金額を集計した一覧表」というもので極めて普通のものでした。ただやっぱり勘所をおさえてるなと思うのは、下記の表です

 



試算表の勘定科目の順番が、"資産→負債→資本→収益→費用"になってるのって確かにルールというわけではないので教科書には書きづらいのですが、ほとんどのケースでこうなってるので説明したあげた方が特に初心者の読者への貢献性は高い様に思います。こういったちょっと気の利いたことの積み重ねで良書は出来上がりますね。
"勘所"を簡潔にまとめた上で、新しい定義で説明する、ってなんとなく流行りそうなアプローチです。次は統計領域で期待です。
 
時頭の良さは本当に申し分ない後輩達にはサクッと簿記は身に付けてしまって、目の前のビジネス取引がいつでも脳内で仕訳変換出来るであるとか、ビジジネスイシューの会計上の取り扱いが出来る様な状態になって欲しいと思う次第です
 

企業戦略論 Jay B Barney - 現場の実務家への最良の戦略書 (2/X)

引き続きBarney3部作を紹介します。実務家の戦略スキル構築への貢献性が非常に高いなと再確認している本です

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Barney3部作
企業戦略論【上】基本編 競争優位の構築と持続
https://amzn.to/33OAjdt

企業戦略論【中】事業戦略編 競争優位の構築と持続
https://amzn.to/3gcGz3E

企業戦略論【下】全社戦略編 競争優位の構築と持続
https://amzn.to/37BOHHg
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前回記事の続きを書きます 

企業戦略論 Jay B Barney - 現場の実務家への最良の戦略書 (1/X)
http://touya-fujitani.blogspot.com/2020/12/strategy.html


競争優位戦略の定義は下記の様なものでした
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競争優位をもたらす戦略:外部環境における脅威を無力化し、外部環境における機会と自社の強みを活用すると同時に、自社の組織が持つ弱みを回避もしくは克服できる戦略
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この通りにやれば競争優位がもたらされる、、というほど単純な話だったらいいのですが、当然そうではありません。ここで気になるのは、脅威の無力化ってどうやるの?、どうやって外部環境の機会に自社の強みを活用するの?、自社の弱みはどう回避・克服するの?という至極真っ当な問いですね。競争優位をもたらす戦略は"3つの問い"から構成されているのです。

まずは"脅威の無力化"からです。本書は本当に言葉の定義が良いので一つ一つ丁寧におさえていく価値が高いです。そもそも脅威とはなんでしょうか

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外部環境における脅威:その企業の外部に存在し、その企業のパフォーマンスを押し下げようとするすべての個人、グループ、組織
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具体的には、脅威とはPorterの5forceの各要素を指します。余談ですが、前回記事にも書いた通り本書は戦略領域を網羅的に扱っていて、Barneyの理論だけを扱っているわけではないのです
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5つの脅威

  1. 新規参入の脅威
  2. 競合の脅威
  3. 代替品の脅威
  4. 供給者の脅威
  5. 購入者(顧客)の脅威

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5つの脅威自体はそれほど目新しいものではないと思いますが、1点見過ごされがちな点を補足しておくと、購入者(顧客)は大事な顧客であると同時に「
自社の収益を下げようとする存在」でもあるということです。お客様は神様ですと言ったりしますが、それだけだとビジネスは成り立たないのです。どちらかというと、企業側も優良顧客であるかどうかという目線で顧客のことは見るべきで、実態としては企業と顧客は互いに助け合うべき対等な関係なのです


脅威の
定義が分かり明確になったところで、次は「いかに脅威を無力化するか」ということですね。脅威の無力化には参入障壁を構築するのが基本手法です。業界への参入障壁を構築することをまず初手として考えます

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業界への参入障壁
  1. 規模の経済
  2. 製品差別化
  3. 規模に無関係なコスト優位性
  4. 意図的抑止
  5. 政府による参入規制
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困ったことにこの業界への参入障壁の構築は、どうしても大企業・機関でなければ出来ないことの様に思えてしまいますね。ですが、企業規模とは無関係の参入障壁もあるのです。超優中小企業というのは、大抵のケースに置いてこのどれかの障壁を持っており、消耗しかしない競争から自由という特徴があります

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規模と無関係のコスト優位の源泉
  1. 自社独自の占有技術
  2. ノウハウ
  3. 原材料への有利なアクセス
  4. 有利な地理的ロケーション
  5. 学習曲線によるコスト優位
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さて、競争優位をもたらす戦略の「外部環境における脅威を無力化し〜」のところまできました。次は「外部環境における機会と自社の強みを活用する」のパートです。そもそも外部環境における機会というのはどの様なものがあるのでしょうか。業界構造ごとに機会がまとめられています

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業界構造 → 様々な機会
  1. 市場分散型業界 → 集約・統合 (新しい規模の経済を発見、所有構造を転換)
  2. 新興業界 → 先行者優位 (技術的リーダーシップ、戦略的に価値のある資源の先制確保、顧客のスイッチングコストの確立)
  3. 成熟業界 → 製品改良・サービス品質への投資・プロセス革新
  4. 衰退業界 → リーダーシップ戦略・ニッチ戦略・収穫戦略・撤退戦略
  5. 国際業界 → マルチナショナルな機会・グローバルな機会・トランスナショナルな機会
  6. ネットワーク型業界 → 先行者優位と勝者総取り戦略
  7. 超競争業界 → 柔軟性・先制破壊
  8. コアなし業界 → 談合・政府規制・高度な製品差別化・需要マネジメント
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機会が分かったところで、自社の強みとはなんなのでしょうか。Barneyの論において自社の強みを考える際に重要な概念が2つあります。経営資源の異質性と経営資源の固着性です。それぞれ定義を抑えておきます
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経営資源の異質性の前提:企業は生産資源の集合体であり、個別企業ごとにそれらの生産資源は異なっている

経営資源の固着性の前提経営資源の中にはその複製コストが非常に大きかったり、その供給が非弾力的なものがある
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後々のVRIOフレームワークによって具体的なアクションを検討する際の前提条件となるので、この2つの概念を理解しておくことはとても重要です。
 
そもそも経営資源というのはどんなものがあるのでしょうか
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経営資源の種類
  1. 財務資本
  2. 物的資本
  3. 人的資本
  4. 組織資本
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そして結局の所、何をするのかということを決めるのが戦略の最も重要な点です。というのは、なんらかの結果(キャッシュフロー)をもたらすのは必ずなんらかのアクションだからです。それではアクションについては、どの様に決定していけば良いのでしょうか。以下の問いをもって捉えていくとされています
 
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VRIOフレームワークが定める企業が従事する活動に関して発すべき4つの問い
  1. Value:経済価値に関する問い
  2. Rarity:希少性に関する問い
  3. Inimitability:模倣困難性に関する問い
  4. Organization:組織に関する問い
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この問いは非常に重要です。とかく無策な状態でアクションを構築するとValueしかもたらさないアクションになりがちです。本来はValueがあると経済価値があるはずなので、収益性を期待してしまうのですが、現実としては希少性と模倣困難性がなければ価格競争に陥りますし、それらを届ける組織が成り立っていなければ高収益な状態は維持出来ないのです。

いよいよ残すは、競争優位をもたらす戦略の最後の「自社の組織が持つ弱みを回避もしくは克服できる」のパートなのですが、長くなってきたのでまた続きを書きます。重要な定義なので、もう一度競争優位をもたらす戦略の定義について確認しておきます

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競争優位をもたらす戦略:外部環境における脅威を無力化し、外部環境における機会と自社の強みを活用すると同時に、自社の組織が持つ弱みを回避もしくは克服できる戦略
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ところで、大事な定義をもう一度確認します。そもそもの競争優位の定義です
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競争優位:企業の行動が業界や市場で経済価値を創出し、かつ同様の行動を取っている競合企業がほとんど存在しない
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競争優位の状態にある際には、同様の行動を取っている競合はいないのです。ここが非常に重要です。ここが担保されていないと、「一見すると勝者の様でいて、そもそも勝者が存在しない競争で単に疲弊しているだけの存在」が生まれます。それは避けなければいけません。これは本当に重要な点です。皆んなで同じ様な行動を取って、その行動の優劣で競争に勝っている状態は競争優位ではなく、競争均衡の状態です。この2つはまったく異なるものです。そして超高収益かつ離職率が低いなどの本当の意味での優良企業は、一見競争均衡の様に見えても、大抵は競争優位の状態にあります。

ここで書いた様なサブスキルとしての戦略スキルを構築することを模索していこうと思っています。ゼロベースとか、地頭力とか流行り過ぎて、そもそも必須知識をちゃんと学習することが言われません。というか、そもそも何が必須知識なのかもあまり認知されていない様に思います
参考記事
誰もが戦略業務をやらばければならない時代に -3000年の叡智を学べる 戦略図鑑 (1/2)


それと同時にいまやCS領域となった戦略の形もつくらなければなりません

 

でもって、以上のことの「情報量に最小にする」というのがここしばらくやりたいと考えていることです。なんでかって、現職のテクノロジー企業の部下にサブスキルとして覚えてもらう必要があるからです。その苦闘の記録を書いているのがこの連載です。しかし、やることいっぱいありますね。
 
 
--関連記事:安宅和人さんのData Scienceの授業

 

関連記事:濱口秀司さんの戦略・イノベーション

企業戦略論 Jay B Barney - 現場の実務家への最良の戦略書 (1/X)

最近戦略業務ばかりしています。というか、来年の前半戦くらいまで戦略業務につくことになりそうです。なので本当の基礎の基礎からやり直しています。「速く、精度が高く、(出来れば)疲れない」状態で諸々を進められないだろうかというのが思うところです。なんとなく昔に英文読解について取ったアプローチと似ています
 
そもそもぼくに求められる戦略スキルも2~3ヶ月でなんらかの戦略パッケージをつくるというよりは、1日でアプローチを策定するとか、そもそも適切瞬間瞬間で戦略判断をするとかそういったものの方が多いです。部下の子からも「戦略ファームに入らずに、戦略スキルを学びたい」という要望をいつも受けますし、それに対応すると本当に喜びます。なので基礎力の見直しを進めています。それにしても彼らの裏側にあるのは、「戦略ファームみたいな労働環境が劣悪で、給与水準も低い職場には行きたくない」というニーズなので、本当に時代は変わったなと思います
 

なぜか日本では流行らない戦略の名著

 
ところで、戦略の本というのは本当に様々なものが出版されますし名著も多いのですが、過去に自分が読んできた多くの本の中で、J Barneyの3部作が本当にいいな思う様になりました。やっぱり、多くの戦略関連の本が「感心はするんだけど、無駄に難解だったり、なんだかモヤっとして実務に役立つ感じがしない」中で実務に役立ちます。


企業戦略論【上】基本編 競争優位の構築と持続
https://amzn.to/33OAjdt

企業戦略論【中】事業戦略編 競争優位の構築と持続
https://amzn.to/3gcGz3E

企業戦略論【下】全社戦略編 競争優位の構築と持続
https://amzn.to/37BOHHg

 
そして、これまた日本ではあまり存在感がありません。日本の出版業界はマーケティング過多なので、良書が読書まで届かないことが多いのは本当に気になります。ぼくがいいなと思う一番大きな理由は、「実務家に役に立つ」点です。そもそもそれを目的として書かれています。戦略の本を読む際に、アカデミックな目的で読むビジネスマンってそれほどいらっしゃらないと思います。どちらかというと、分かりやすい形で実務に貢献するスキルを獲得したいという方がニーズは高いんじゃないでしょうか。で、そう言ったニーズを狙い撃ちした様な浅薄なビジネス本が乱立しているわけですが、天下のJ Barneyがこんなに分かりやすくて実務家向けの本をガッツリ出してくれているので使わない手はないと思います。大学受験の参考書並に文章が読みやすいです。

なぜ現場の実務家に役に立つのか

本書がなぜ実務家に役に立つかというと、以下の3点です
  • 戦略というものを構成する各要素が最小単位で非常に良質な記載でまとまっている
  • 戦略の各領域・理論が網羅的にカバーされている、Barneyの理論だけ記載されているわけではない。『良い戦略・悪い戦略』で日本でもすっかり有名になったRichard Rumeltもカバーされています。RumeltがRBVの一派なので、当然と言えば当然ですが
    関連記事
    戦略再考 - Tech firm/事業会社における戦略業務 
    http://touya-fujitani.blogspot.com/2020/09/strategy.digital.html?q=%E6%88%A6%E7%95%A5

  • 上記2点により、実務に置いて戦略の各構成要素を自分で組み合わせて戦略構築が出来る様になる。これは当たり前の様でいて、大変貴重です。よくMETIなどが公開しているファームの資料で戦略の勉強をしようとする方がいらっしゃいますが、出来上がった最終形だけみても構成要素・作成過程が分からない為、同じものを作成出来る様になるのはあまりならないというか、そもそも練習方法として筋が悪いです。MECEがどうとか、ロジックツリーがどうとかいうアプローチも「それは使うけどさ、、、」みたいな粋を出ないと思ってしまいます
元々エッセンスをまとめた本なのですが、そこのさらにエッセンスの部分を抽出していきたいと思います。
 

戦略の定義・策定の基本構造

 
まずは、どんな戦略書でも気になる戦略の定義からですね。なぜ戦略の定義が気になるかというと、一般的に認知された戦略の定義というものは存在しないからです。その上、定義されたものがその後の論のすべての前提となるので、著者の腕が試されるというかその本自体読むべきかどうか大体ここで判断出来ます(そもそも天下のJay Barneyに対して不遜極まりないですが)

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戦略の定義:いかに競争に成功するか、ということに関して一企業が持つ理論
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競争に成功するともたらされるのが競争優位の状態です。それでは競争優位の状態とはどういう状態でしょうか

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競争優位:企業の行動が業界や市場で経済価値を創出し、かつ同様の行動を取っている競合企業がほとんど存在しない
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ここで一番重要なのは"同様の行動を取っている競合企業がほとんど存在しない"という点です。ここは、ぼくは個人の人生でも非常に重要だと思ってしまいます。特に衰退産業で、優秀な方々が「同じことをする」という競争の報われなさを見ることは、ファーム時代に本当に多かったです。ブルーオーシャン戦略以前に、そもそもBarneyみたいな古典の名著でこういうことは既に語られているんですね。本書では、「"戦略を学ぶ"ということは、"競争優位の獲得を目指す為のセオリーを学ぶことと同義"」とされています。


そして企業の戦略を考える上で最も簡単な方法は、「企業は良く考えられたセオリーに基づいて事業を開始、市場がそのセオリーの有効性を検証し、その結果を受けて経営者はセオリーがより効果的に競争優位をもたらす修正を加える」とされています。Mintzbergの創発戦略ですね。創発戦略の定義もおさえておきます。
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創発戦略:企業がある業界や市場で事業運営している最中に、時間の経過と共に「現れ出る」戦略。その業界における市場動向が予測不能である場合、創発戦略は特に価値が高い
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結局のtところ、競争優位をどの様にもたらすということなのですが、それには下記の様に定義されています

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競争優位をもたらす戦略:外部環境における脅威を無力化し、外部環境における機会と自社の強みを活用すると同時に、自社の組織が持つ弱みを回避もしくは克服できる戦略
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やはり最良書は定義がすっきりしていて、かつ洗練していたいいなあと思います

長くなったので、また続きを書きます

--関連記事:安宅和人さんのData Scienceの授業
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