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デジタルについてトッププロファーム勤務の藤谷が書き綴ります。

企業戦略論 Jay B Barney - 現場の実務家への最良の戦略書 (1/X)

最近戦略業務ばかりしています。というか、来年の前半戦くらいまで戦略業務につくことになりそうです。なので本当の基礎の基礎からやり直しています。「速く、精度が高く、(出来れば)疲れない」状態で諸々を進められないだろうかというのが思うところです。なんとなく昔に英文読解について取ったアプローチと似ています
 
そもそもぼくに求められる戦略スキルも2~3ヶ月でなんらかの戦略パッケージをつくるというよりは、1日でアプローチを策定するとか、そもそも適切瞬間瞬間で戦略判断をするとかそういったものの方が多いです。部下の子からも「戦略ファームに入らずに、戦略スキルを学びたい」という要望をいつも受けますし、それに対応すると本当に喜びます。なので基礎力の見直しを進めています。それにしても彼らの裏側にあるのは、「戦略ファームみたいな労働環境が劣悪で、給与水準も低い職場には行きたくない」というニーズなので、本当に時代は変わったなと思います
 

なぜか日本では流行らない戦略の名著

 
ところで、戦略の本というのは本当に様々なものが出版されますし名著も多いのですが、過去に自分が読んできた多くの本の中で、J Barneyの3部作が本当にいいな思う様になりました。やっぱり、多くの戦略関連の本が「感心はするんだけど、無駄に難解だったり、なんだかモヤっとして実務に役立つ感じがしない」中で実務に役立ちます。


企業戦略論【上】基本編 競争優位の構築と持続
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企業戦略論【中】事業戦略編 競争優位の構築と持続
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企業戦略論【下】全社戦略編 競争優位の構築と持続
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そして、これまた日本ではあまり存在感がありません。日本の出版業界はマーケティング過多なので、良書が読書まで届かないことが多いのは本当に気になります。ぼくがいいなと思う一番大きな理由は、「実務家に役に立つ」点です。そもそもそれを目的として書かれています。戦略の本を読む際に、アカデミックな目的で読むビジネスマンってそれほどいらっしゃらないと思います。どちらかというと、分かりやすい形で実務に貢献するスキルを獲得したいという方がニーズは高いんじゃないでしょうか。で、そう言ったニーズを狙い撃ちした様な浅薄なビジネス本が乱立しているわけですが、天下のJ Barneyがこんなに分かりやすくて実務家向けの本をガッツリ出してくれているので使わない手はないと思います。大学受験の参考書並に文章が読みやすいです。

なぜ現場の実務家に役に立つのか

本書がなぜ実務家に役に立つかというと、以下の3点です
  • 戦略というものを構成する各要素が最小単位で非常に良質な記載でまとまっている
  • 戦略の各領域・理論が網羅的にカバーされている、Barneyの理論だけ記載されているわけではない。『良い戦略・悪い戦略』で日本でもすっかり有名になったRichard Rumeltもカバーされています。RumeltがRBVの一派なので、当然と言えば当然ですが
    関連記事
    戦略再考 - Tech firm/事業会社における戦略業務 
    http://touya-fujitani.blogspot.com/2020/09/strategy.digital.html?q=%E6%88%A6%E7%95%A5

  • 上記2点により、実務に置いて戦略の各構成要素を自分で組み合わせて戦略構築が出来る様になる。これは当たり前の様でいて、大変貴重です。よくMETIなどが公開しているファームの資料で戦略の勉強をしようとする方がいらっしゃいますが、出来上がった最終形だけみても構成要素・作成過程が分からない為、同じものを作成出来る様になるのはあまりならないというか、そもそも練習方法として筋が悪いです。MECEがどうとか、ロジックツリーがどうとかいうアプローチも「それは使うけどさ、、、」みたいな粋を出ないと思ってしまいます
元々エッセンスをまとめた本なのですが、そこのさらにエッセンスの部分を抽出していきたいと思います。
 

戦略の定義・策定の基本構造

 
まずは、どんな戦略書でも気になる戦略の定義からですね。なぜ戦略の定義が気になるかというと、一般的に認知された戦略の定義というものは存在しないからです。その上、定義されたものがその後の論のすべての前提となるので、著者の腕が試されるというかその本自体読むべきかどうか大体ここで判断出来ます(そもそも天下のJay Barneyに対して不遜極まりないですが)

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戦略の定義:いかに競争に成功するか、ということに関して一企業が持つ理論
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競争に成功するともたらされるのが競争優位の状態です。それでは競争優位の状態とはどういう状態でしょうか

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競争優位:企業の行動が業界や市場で経済価値を創出し、かつ同様の行動を取っている競合企業がほとんど存在しない
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ここで一番重要なのは"同様の行動を取っている競合企業がほとんど存在しない"という点です。ここは、ぼくは個人の人生でも非常に重要だと思ってしまいます。特に衰退産業で、優秀な方々が「同じことをする」という競争の報われなさを見ることは、ファーム時代に本当に多かったです。ブルーオーシャン戦略以前に、そもそもBarneyみたいな古典の名著でこういうことは既に語られているんですね。本書では、「"戦略を学ぶ"ということは、"競争優位の獲得を目指す為のセオリーを学ぶことと同義"」とされています。


そして企業の戦略を考える上で最も簡単な方法は、「企業は良く考えられたセオリーに基づいて事業を開始、市場がそのセオリーの有効性を検証し、その結果を受けて経営者はセオリーがより効果的に競争優位をもたらす修正を加える」とされています。Mintzbergの創発戦略ですね。創発戦略の定義もおさえておきます。
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創発戦略:企業がある業界や市場で事業運営している最中に、時間の経過と共に「現れ出る」戦略。その業界における市場動向が予測不能である場合、創発戦略は特に価値が高い
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結局のtところ、競争優位をどの様にもたらすということなのですが、それには下記の様に定義されています

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競争優位をもたらす戦略:外部環境における脅威を無力化し、外部環境における機会と自社の強みを活用すると同時に、自社の組織が持つ弱みを回避もしくは克服できる戦略
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やはり最良書は定義がすっきりしていて、かつ洗練していたいいなあと思います

長くなったので、また続きを書きます

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