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デジタルについてトッププロファーム勤務の藤谷が書き綴ります。

戦略再考 - Tech firm/事業会社における戦略業務 (2/n)

前回の記事の続きを書いていきます

戦略再考 - Tech firm/事業会社における戦略業務 (1/n)
http://touya-fujitani.blogspot.com/2020/09/strategy.tech.html

事業会社のおける戦略業務の方法論の構築と、従来のStrategyとDigital/DX strategyはまったく別物であることに立脚した方法論の再構築に取り組んでいる、というのが今のぼくのステータスです。Data science/analyticsもStrategyにアドオンするのが基本的には筋の良いアプローチになる仮説を持っています


従来の古典的Pure strategyとDigital strategyはまったくの別物

最近、本当によく思うのは従来の古典的Pure strategyとDigital strategyはまったくの別物ということです。アプローチも求められるスキルも異なります。超乱暴かつ端的に言ってしまえば、古典的Pure strategyはファイナンスの世界観であり、Digital strategyはComputer scienceと数学の世界観です。ここが決定的に違う点だと思います。この本を読むとそれが痛感されます
 
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  • 古典的戦略
    伝統的な戦略論は、規模の経済に基づいている。企業は線型あるいは鎖型の構造を持ち、インプットを制御して効率を最大化することにより、アウトプットのコストを抑え、自らの価値を高めようとする

  • スマートビジネス
    スマートビジネスの戦略は本質的に、経済的関係を調整すること(ネットワーク・コーディネーション)とそうした関係を定量的に最適化するメカニズムを設計すること(データインテリジェンス)にかかわるものだ。ビジネスパーソンの多くは、コンピュータ科学の理解がイノベーティブな企業経営に不可欠なことを理解している。しかし経済学の理論や概念を知っていることが、テクノロジードリブンな企業において一段と重要になっていることを認識している人は少ない。テクノロジードリブンな企業というのは、要するにあらゆる企業ということである
 
出所:アリババ 世界最強のスマートビジネス https://amzn.to/32mwiwr
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日本最高の戦略家の一人である安宅さんのDXの定義も、"DXはOldエコノミーが、AI×データ化すること(下の図で右に行くこと)"とされています。当然、その実施にあたってはcomputer scienceが前提となるのです。


出所:DXとは何か? - 安宅和人
https://kaz-ataka.hatenablog.com/entry/2020/07/25/004032
 
なので、戦略策定の参加者は必要最低限というよりも、かなりの水準のCSバックグラウンドやDigitalのドメイン知識がなければ、本来の意味合いでのDigital strategyもDX strategyも出来ません。多分既存のstrategyファームが変わっていかなければならない点です。最近、ACのstrategy teamの出身者がstrategy firmで重用されるのは、strategy skillというよりCS skill故な気がしています。
 
例えば、スマートビジネスの肝となるこの表のステップをCS skill抜きに実施するのはやっぱり無理があります
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スマートビジネスによる最大のメリット協調的ネットワークとデータインテリジェンスによって、"これまでの戦略的思考"はあらゆる段階でお払い箱になってきたが、その変化が最も劇的に表れたのは企業における意思決定のあり方だ。スマートビジネスは可能なかぎりすべての意思決定を自動化する。データインテリジェンスは意思決定を、消費者対応の面でもネットワークの調整の効率化においても、着実にスマートにする。データインテリジェンスと協調的ネットワークがあれば、企業はスケール化とカスタマイズを同時に行うことができる。これはインターネットとAIが企業経営にもたらした最大のメリット
 

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しかし恐ろしいことがさらっと書かれています。一番重要なのはAlibabaの様な超大企業で既にそれが実装済なことです。SFの話なのではないのです。実装済みの企業があと2つありますね、google, Netflixです。
 
いまの戦略の最前線は"これまでの戦略的思考"ではなく、意思決定をしてくれるmachineの構造設計と実装、そして社内外の協調ネットワークのデザインなのです。戦略の未来はここだと日々確信が強くなります
 
各ファームDigital /DX strategyを売り込んでいますが、ここまでの深度で外部アドバイザリーが出来るかと言うと、かなりの難易度の様に思います。ここをパッケージ化出来れば、一時代が始まる様な気がするんですけれど、そこの震源地は実はAWS/GCPスペシャリストが一番近い位置にいるんじゃないかなと思ったりします。要はそれくらいCS寄りの話ということです
 
なので、戦略の最前線はテックにあることを見据えて今後5年ほどかけてそこに対応していくと共に、実績をつくっていきたいと思っています
 
 
 
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