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デジタルについてトッププロファーム勤務の藤谷が書き綴ります。

Shift 濱口秀司 (著) - イノベーションの最高の教科書 (2/)

引き続き、日本人の最高のイノベーターの濱口秀司さんの論文集Shiftについて書いていきます。発売当時は凄く盛り上がりましたね。ただ名著というものは「使い倒す」ことが重要です、そしてそれが名著への最大の敬意だと思います。

SHIFT:イノベーションの作法

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目次は下記のとおりです。
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第1回 イノベーションは誰もが起こせる
第2回 SHIFT領域の考え方
第3回 バイアスを破壊する
第4回 問題の本質から強制発想する
第5回 市場を実験場にしない
第6回 不確実性の中で意思決定を下すには
第7回 戦略意思決定の質を高める
第8回 ユーザーの心をいかにとらえるか
第9回 誰に何をどのように働きかけるか
第10回 プライシングを動的にとらえる
第11回 自由度の高いフェーズにリソースをかける
第12回 個人で考え切ってこそ議論の質が上がる
第13回 学ぶ者が教える者を超えなければ意味がない
第14回 不確実性を論理的に乗り越える ~SHIFTに関するQ&A
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本書のエッセンスの部分を解説していきたいと思います。

2種類の非連続変化-JUMPとSHIFT

本書では、非連続変化には"JUMP"と"SHIFT"の2種類があるとされています。
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JUMPというのは、いまある事業領域から飛び地のエリアで新規事業を始めることである。アイデアと中心人物と資金があれば、必要な追加リソースをその場で集めてきて、アイデアを中心に事業を新規に組み立てていくことができる。もう一つのイノベーションの型がSHIFTである。これはJUMPとは違い、既存の事業領域や所属メンバーをコアにして商品やサービスのあり方を規定し直し、市場の新しい認知を得ることで事業価値を高める設計手法である。
出典:濱口 秀司. SHIFT:イノベーションの作法  
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SHIFTを実現する最大のカギは「認知の再形成」とされており、三つの基本活動からなるとされています。


  1. イノベーション(I)
  2. インターナルマーケティング(Mi)
  3. エクスターナルマーケティング(Me)

インターナル・マーケティングとは要は社内の説得活動なんですが、ここが重要になるというのが本当によくわかります。ぼくを筆頭に人間は現状維持の檻の中です。というか数々のプロジェクトに取り組まれてきた濱口さんだからこそ、ここの重要性がわかるのですね。イノベーションそのものと同列に扱われているのは現場感があっていいです。インターナル・マーケティングでは、バイアスの提示とそれを打ち破るコンセプトが重要とされています。
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ケイオスタイプがみずからのアイデアをストラクチャータイプに理解してもらうには、まずそれが業界の既成概念ともいえるバイアスを破壊するユニークなものであることを、〝コンセプト〟として語ることが大切である。もう少し説明すると、「コンセプト」とはアイデアと切り口を合わせたものであり、「切り口」とは論理的で構造的な見せ方のことである。切り口をセットにして語ることで、そのアイデアの強さを、論理的かつ構造的に示すことができ、ストラクチャータイプを説得する武器になる
出典:濱口 秀司. SHIFT:イノベーションの作法  
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Shiftが起こる領域

この3領域すべてShiftを起こすことが出来ることが望ましいとされています。i-phoneが一番の例ですね。特にDigital eraを意識して書かれているというわけではないのですが、現状のランドスケープに非常に整合しています。
  1. ビジネスモデル(B)
    ・いかにして立ち上げるか(起動)
    ・いかにして伸ばすか(成長)
    ・いかにしてライバルからの攻撃を防ぐか(防御)
    ・いかにして儲けるか(利益)
  2. テクノロジー(T)
    ・技術全般
  3. コンシューマーエクスペリエンス(C)
    ・人々の体験、生活様式を一新させるSHIFTのこと

バイアスを構造化する

ここはすごく面白いです。前回の記事で桃太郎のバイアスを構造化するとどうなるか?という問いがありました。回答としては、桃太郎のバイアスは「勧善懲悪」と「チーム」の2点です。で、これの真逆(「グレー」、「単独」)をいけば新桃太郎が生まれるというわけです。新桃太郎のポジションとしては、Marval Herosの構造になってますね。
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 イノベーティブな発想の3要件

この3点が要件とされています。確かにそうだなと唸らされます。 
  1. 見たこと・聞いたことがない
  2. 実行可能である
  3. 議論を生む

イノベーションの発想のセオリー

この3点の流れでいくとされています。濱口さんの方法論は「バイアスの存在」を前提としているのですね。
  1. バイアスを構造化(可視化)する。
  2. バイアスのパターンを壊す
  3. 強制発想する。

ユーザーの認知する価値
この3点がユーザーの価値とされています。

  1. 機能:利便性
  2. デザイン:情緒性
  3. ストーリー:意味性
機能は3つ程度で言えるもの、デザインはひと目で分かるもの、ストーリーは誰でも語れるものであることが肝要であり、またこの3つの整合性が重要とされています。普通のことの様に思いますけど、うまくいかないプロダクトって大抵1で止まっていますね。2のところで苦心している場合がほとんどです。が、重要なのはストーリー:意味性です。ほんと商品そのもので差別化するのは難しい時代なので、ここをつくり込めるかで勝負が決まる場面を見ることが多いです。

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 ユーザーの心をいかに捉えるか

この3点が基本的な方法論とされています。
  1. スナイパー型
  2. ハンター型
  3. フィッシャーマン型
スナイパー型もハンター型もユーザー像を想定して狙い撃ちするアプローチであり、単一商品か複数商品かという違いです。それに対してフィッシャーマン型は、提供価値の何か1点を起点として顧客を絡め取るということを特徴としています。デザイン、ファンクション、ストーリーのどこかでユーザーに共感してもらおうという方式です。

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これがコンサル本かというと違いますが、コンサルタントが読むべき本としてこれ程の名著があったかなあと思います。次回以降も続きます。

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