Digital, digital and digital

デジタルについてトッププロファーム勤務の藤谷が書き綴ります。

パワーポイント再考 - ファーム外でのチャートの在り方 (1/X)

転職したことにより、最近1周回ってパワポの指導をする機会が増えました。ファーム時代は若手はチャートは命であり出来なければ即死みたいな意識なので、多少の指示で成長するというかそもそも突っ込ませない様に命懸けで作成してくるのですが、テック企業だと別にチャートは命ではありません。当たり前ですが、最優先されるべきはテクノロジーとユーザーであり、パワーポイントではないのです


とは言うものの、資料作成は社会人の基本なので避けて通れないという点があります。何より素晴らしいDigitalのコアスキルを持っている若手が、チャートみたいなテック企業においては価値の源泉ではないサブタスクで時間を浪費するのは"無駄"です。最近のテック企業はファーム出身者が多いのでここで怒られることが多いという、ぼくからすると妙な光景が生まれています。最優先されるべきはテクノロジーとユーザーです。トップテクノロジー企業の社員が資料作成に膨大な時間を取られるのは世界の発展に対する損害だと、ぼくは結構本気で思ってます。


ところで、よく「しっかり考えて言語化されていれば、自然に紙は書ける」とか、思考の質とスライドの質が直結しているかのような詰め方をする方がいますが、半分はホントですが、半分は嘘です。というのはスライド作成というのは明確に「特定の情報処理」なので、当然習熟の問題があります。特定の情報処理になれているかどうかという点で攻めてしまうのが筋が良いです。当然ですが、スライド作成=思考そのものではないのです。なんだかトップテクノロジー企業の社員がスライドに手間取られるのはイケてません。


なんで、改めて"ファーム外"でのチャートの在り方について再考しました。取りあげているスライドはネットにすべてあがっているものです。結構どれもネット上では一時期話題になったり、結構有名なスライドかと思います。ファーム外でチャートをつくることを想定しています。特にBDDとか官公庁への報告書とかの文字ギッシリ系は対象外です。こういうのとかこういうのですね。

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これらはこれで重要な役割があるのですが、要は現場のユニットレベルでビジネスを動かしていく為のチャートということです。

とことでチャートってどういうフローで書けるようになれるんでしょうか。大体下記の流れかと思います。

スライドが書けるようになるまで
1. パワーポイントの作り方の基本事項の知識としての習得
2. パワーポイントの評価視点、そもそもの「見方」の獲得
3. 自分で作成出来る様になる
4. 他人がつくったものをレビュー出来る様になる
5. 以後、果てなき道

重要なのは実は"2.パワーポイントの評価視点、そもそもの「見方」の獲得"です。ネット上にあるスライドをひたすら読み込んだり、社内のスライドをひたすら眺めたりするのは実はいい学習方法でありません。英文法をちゃんと理解しないままで、ひたすら多読だけするのに似ています。

まずは、原則とルールを覚えることが重要です。
その上で、色・構造・オブジェクト・線の引き方といったすべての要素がなぜそうなっているかの理由を把握することが必須事項です。

ちゃんと「見える」ようになることが重要です。アオアシでいうところのこの場面ですね。たぶんここをすっ飛ばしてしまうことが諸々の不幸を呼んでいる気がします。

アオアシ 5
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一般なことはもう山の様に本が出ているので、評判が高いものから気に入ったものを選べばいいと思います。ぼくは山口さんの本を進めることが多いですが、他にも良い本があるということならそれを使えばいいだけのように思います。

外資系コンサルのスライド作成術―図解表現23のテクニック 山口周
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原則は死守しましょう。というのはパワポの評価をする際に原則がはずれていると即減点ポイントになってしまうからです。スライド作成には色々な宗派があり、そこで闘っても不毛です。ただ「みんなが認めている原則」ははずしていると、即死スライドになります。

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必ず入る要素
1. メッセージ
2. グラフ/チャート・表のタイトル
3. グラフ/チャート・表
4. 脚注
5. 出所
6. ページ番号
↑こういった要素をおさえることは極めて重要です。


山口さんの本は実例集の方もガッチリ学習しましょう。

外資系コンサルのスライド作成術 作例集―実例から学ぶリアルテクニック
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基本ルール
1. スライドの基本フォーマット
2. タテヨコのルール
3. 非冗長性のルール
4. 二次元のルール
5. 視覚ボリュームのルール
↑こういった基本ルールを遵守することは極めて重要です。

というようなことを抑えた上で、本にあまりのってないことでスライド作成上のポイントとなる点(異論反論超歓迎織り込み済です)について並べます。たぶん、ファジー過ぎてなかなか本には書きづらいんじゃないでしょうか。でも大切なことです。ぼく自身は大したことはない人間ですが、ファーム時代に一緒に働いてきた方達は間違いなく世界クラスです。ここだけは自信があります。そういった方達から学んだことを、最近改めて思い出すことが多く自分のメモ代わりに列挙します。

1. 灰色の使い方
・灰色の使い方というのは非常に重要です。なぜかというと、灰色というのは色のなかで唯一使用した際に強調にならない色だからです。ただオブジェクトを区別したいだけの場合などは基本的に灰色を使いましょう
灰色を使うもう1つの利点は、チャートのベースが薄めになるので後々の強調点などの濃淡が映えるという点です。
2. 強調色として赤を使わない
・赤は強調色として使われることが多いですが、これは避けましょう。アラート色だからですスライド作成では、読み手の脳負担を極限まで削減するという至上命題があります。その観点で見ると、アラート色が乱発されていると読み手が気が付かないところで疲れてしまいます。1日中アラートを受けていたら人間誰しも疲れちゃいますね。疲れた相手には物事は伝わりません。これはよくありません。
3. (可能であれば)ベースは青と灰色の2色
・スライドは2色までということはよく言われますね。ところでその色は何色にすべきなのでしょう。テンプレなどで決定されてしまうケースはあるかとと思いますが、自由に出来るなら青と灰色が筋が良いです。というか便利です。
4. そもそも色に頼らない
・色に頼らず、構造自体で強調されるようにするのがベストです。その構造をつくった後に色を使うとキラースライドになります。要はこういうのですね。まあデータにも左右されますが。

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5. 強調するのは1箇所のみ
・ワンスライド・ワンメッセージの鉄則がある以上は、ボディ部分で強調すべき箇所は基本的に1箇所であるはずなのです。ここが綺麗に流れているスライドはとても読みやすく、すべてがクリアです。

余談ですが、こういう表ラベルのところに濃い色を使って白抜き文字を使うのは本当に多用されますが、イケてません。なぜかというと色の観点でラベルがスライド内で強調されているからです。ラベルを強調しければいけない時はそれほどないはずです。

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6. 色のベースは薄く
・色のベースを薄くしておかないと、濃淡がつきません。よって、効果的な強調が出来なくなります。たまに見かける原色を使い切った上でさらに5色以上つかって諸々を強調するみたいなのは何も伝わりません。抑制こそが最高の強調ということですね
7. 黒字の濃さを調整する
・黒字の濃さを調整するということをするとスライドが本当に上品になります。文字を詰め込んだスライドで黒字の濃さが調整されていると、作成された方の分かってる感を非常に感じます。
8. スライドには余白を残す
・余白がなくて文字ギッシリだと読みてに圧迫感を与えます。読み手の脳負担を極限まで削減するという至上命題にそぐわないチャートになります。


後日また続きを書きます。