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デジタルについてトッププロファーム勤務の藤谷が書き綴ります。

あるいは日本史上最高峰のマーケティング実録 - 森岡毅さんの著作 (1/)

ぼくにはこの一文の重みが分かる。

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絶対に負けられない戦いがそこにある時、重圧に対して我々が正気を保つ拠り所は、「合理的に担保されている領域がどれだけ大きいか」です。
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確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力 (角川書店単行本)
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これは大変な名著だと思います。USJマーケティングによって復活させた森岡さんとそのパートナーの今西さんによる共著です。USJマーケティングによる復活というのは、間違いなく近年のマーケティング領域での最大規模の成功案件と言えるでしょう。プロジェクトを主導された森岡毅さんはマーケティング世界トップの一角のP&Gご出身ですね。

ところで、森岡毅さんの著作は何冊か出版されていますが、有名なものはこの3冊です

USJをV字回復させた森岡毅の実戦マーケティング3部作
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1. USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門
2. USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか? (角川文庫)
3. 確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力

この順番に読むのが良いと思います。なぜかと言うと、このような流れになっているからです。

1. マーケティング一般
USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門
2. ケースとしてのUSJプロジェクト(森岡さんが行なった「観察」、「発見」の記録)
USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか? (角川文庫)
3. データマーケティング森岡さんの言うところの数学マーケティング
・確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力

なぜこの3冊が優れているかというと、まず前述の通り「マーケティング領域での最大規模の成功案件の実録書」と言える内容だからです。筆者はP&Gで体得した極めてスタンダードなマーケティングフレームに則り、USJという対象を徹底的に観察して、発見をした上で、戦略を構築しています。そしてその裏で走っていたデータモデルの解説まで公開しているので。これは結構大変なことです。

この3冊を振り返ることがマーケティングの復習に大変良いなと改めて思ったので、何回かに分けて解説をしていきたいと思います。

まずは、USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門からです。

ぼくが森岡さんの本がいいなと思うのは、やはり実践の中で生きてこれらた方なので、言葉の定義が明確で分かりやすいです。例えば、戦略の定義はこのようにされています。

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戦略の定義: 戦略とは、目的を達成するために資源を配分する「 選択」のこと( A set of choices to define how to allocate resources in order to achieve an objective.)
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戦略の定義は山のようにあるのですけれど、ぼくはリソースの概念が入っている定義が好ましいと思っています。やはり実施可能性が低い戦略は価値はありません。というよりも結局のところ「結果をもたらすのはなんらかのアクションです」。そして「リソースを投下された主体がアクションを起こし、結果を出す」のです。やはり戦略の要はリソース配分です。

他の主要用語の定義もきっちり明確で分かりやすくていいなあと思ってしまいます。こういうのホントわかりにくく定義している本が多いです。

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目的: 命題、 最上位概念
目標: 資源集中投下の具体的な的
戦略: 資源配分の選択
戦術: 実現するための具体的なプラン
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やはり非常に分かりやすく、腹落ちしやすい定義です。
次回以降詳細を説明します。